猫とガジェットと自転車の小規模な生活

タイトルにあるようなネタをちまちまと綴っています。

空の境界(中)

昼下がりのVELOCEに持ち込んで、1時間ちょっとで読了しました。

上巻はどちらかといえば、主人公の一人である「式」のヒーローっぷりが心地よい話でしたが、中巻は毛色が異なります。式ももちろん活躍するのですが、登場人物のそれぞれにスポットが当たり、それぞれが苦悩し、煩悶し、身をねじらせつつ狂おしそうにラストへ向かう。物語の主幹も「ねじれ」ですし、息苦しさを強く感じさせる物語の構成となっています。

上巻でも感じたことですがやはり、菊池秀行氏の影響が色濃い構成です。ついでに言えば、文庫のあとがきも菊池氏が書かれていますね。

最強の敵が登場し、彼との死闘が物語の幹であることは疑う余地もないのですが、そればかりに読み手の目を向けさせない「書き手の技量」には感服します。ロジックの点で少々苦しいところは確かにありますが、この人の文章は本当に巧い。いや、巧いというか、何度も何度も納得のいくまで書き直したのだろうと思わせる、文と文の間に垣間見える執念、情念が凄い。量産の効く人ではないでしょうが、嫉妬を禁じえない努力と才能です。


空の境界 中 (2) (講談社文庫 な 71-2)